【公認心理師解説】子育て中にイライラが止まらないのはなぜ?ーアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)を用いた子育てのイライラとうまく付き合うコツ

「子育てをするようになってからイライラが止まらない…」「毎日、朝から晩まで子どもに怒ってしまう」
そんなことを感じたことはありませんか?
SNSでも、「#イライラしない子育て」「#イライラママ卒業」といった言葉を多く目にします。
子育ては、思い通りにいかないことばかり。そんな毎日を送るママにとって、イライラは誰しも悩む問題なのかもしれません。
この記事では、イライラが止まらないのはあなた1人ではない、ということをお伝えするとともに、心理学の視点から子育てのイライラが止まらない仕組みと、上手く付き合うコツをご紹介します。
Table of Contents
なぜ子育て中にイライラが止まらないの?心理学からイライラの仕組み
1. 心と体の疲労がイライラを引き起こす
子育て中は、夜間の授乳や夜泣き、仕事や家事の両立などで十分な睡眠や休息をとることが難しいことが多いです。
疲れているとイライラしやすい、というのは、誰しも経験があるかと思いますが、実際に心理学の研究でも疲労があると、「気持ちを調整する能力」が低下することが示されています(※1)
そのため、普段なら受け流せる小さな出来事にもイライラしやすくなってしまうときは、疲れがたまっているサインなのかもしれません。
2. 「イライラしちゃだめ」って思っていませんか?
冒頭の「#イライラママ卒業」というキーワードにあるように、子育て中のイライラは「良くないこと」「NG」と捉えられやすいものです。
そのため、「ママはいつも笑顔でいなければならない」「子どもに怒ってはいけない」と自分に厳しいルールを課し、イライラを抑え込もうと頑張ってしまう方も多いのではないでしょうか。
けれども、イライラを「感じないようにしよう」とすると、かえってその感情が強まってしまうことがあります。
たとえば、「今から絶対に梅干を想像しないでください」と言われると…
頭の中にもくもくと梅干のイメージが浮かんだり、口の中の酸っぱい感じが思い出されたりしませんか?
まさにそれと同じことが、子育て中の「イライラ」にも起こることがあります。
つまり、「イライラしちゃいけない」と無理に抑えるほど、イライラは増幅してしまうのです。
子育て中のイライラとどう付き合えばいい?
なぜ「イライラが止められないのか」という心理的な仕組みを理解できても、やはり日常の中では感情に振り回されてしまう、ということも少なくありません。
では実際に、どうすればイライラとうまく付き合っていけるのでしょうか。
ここでは、心理学のテクニックを取り入れながら具体的なコツをお伝えしていきます。
1.休息をとる ―誰かに頼るイメージだけでもOK!
イライラの大きな要因になる、「心と体の疲れ」をケアするために、まずは 「自分の休息を優先する」 ことが大切です。とはいっても、日々の忙しさから「そんな時間はないと」感じる方も多いかもしれません。
そこで意識してほしい工夫は、「誰かに頼ること」、「手を抜くこと」。 研究でも、周囲からのサポートが多いほど、育児ストレスが少ないことが示されています 2)。
具体的には、
・家事サポートや子育てサポートを利用する
・家事を完璧にこなそうとせず「今日はここまで」と区切る
・パートナーや家族に協力を頼む
・ミールキットや宅配サービスを利用する
・便利家電を使う
周囲にお願いするのが難しいときは、時短グッズやサービスを活用するのも一つの方法です。もし「自分ひとりで抱えすぎている」と感じたら、少し力を抜いて、頼って、自分を労わってあげてくださいね。
さらに、「実際に頼るのが難しい」と感じる人は、“頼るイメージをするだけ” でもOKです。
「もし誰かに家事をお願いできたら」「優しく『大丈夫だよ』と声をかけてもらえたら」と、頭の中で想像してみましょう。研究では、サポートを“実際に受けること”だけでなく、“受けていると想像すること”も、ストレス反応の軽減につながることが示されています 3), 4)。
つまり、誰かにすぐ頼れなくても、“支えを受けている自分”を思い描くだけで、心は少し軽くなるのです。
2. イライラをなくそうとせず「受け入れてみる」
子育て中にイライラすることは、とても自然なことです。でも上述したように、そのイライラを抑えようとすると余計にイライラしてしまいます。
だからこそ、大切なことは、「イライラをなくそう」と頑張るのではなく、「今イライラしているな」と気が付き、そのまま受け入れてみることです。
「そのまま受け入れる」となると少し難しく感じる方もいるかもしれませんが、まずは「私はイライラを感じているんだな」と心の中で言葉にしてみるのもよいかもしれません。
そうすることで、気持ちと距離が取れ振り回されにくくなります。また、「私はどうしたいのか?」と考える余裕にもつながります。
これはACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の考え方の1つであり、感情をコントロールしようとするのではなく、受け入れていくことで自分らしい子育てにつなげていきます。
子育て中のイライラと上手に付き合うために 〜ACTという方法〜
ACTでは、ネガティブな感情を否定せず「そこにあるもの」として受け入れたうえで、「自分が心から大切にしたいこと」に沿って行動を選ぶことを大切にしています。
子育てに当てはめると、イライラを抱えながらも、「私はどんな親でありたいのか」「子どもとどんな関係を築きたいのか」という自分の大切にしたい方向に沿って行動していくことができます。
イライラを「なくそう」とするよりも、イライラを抱えたままでも「自分らしい子育て」を選んでいけるのが、ACTの大きな特徴です。
イライラはあっても大丈夫。イライラしている自分を責めることなく、自分の子育てにおいてできそうなこと、やってみたいことを1つだけでもまずやってみることにぜひトライしてみませんか。
いますぐできる!子育て中のACTエクササイズ
1. 感情にラベルを貼る(ディフュージョン)
子どもに強く言いそうになったとき、心の中で「これは“イライラ”だな」とつぶやいてみます。
👉 「私はイライラしている」より、「これはイライラだ」と対象化するのがコツです。感情と自分の間に少し距離が生まれます。
2. 「いまここ」に戻る(マインドフルネス)
感情に巻き込まれそうになったら、体の感覚をひとつ選んで観察してみましょう。
👉 例:足の裏の感覚、手を子どもに触れている感覚、呼吸のリズム。
ほんの数秒でも「いまここ」に注意を向けるだけで、反射的な行動から一歩離れられます。
3. 「親としての価値」を思い浮かべる(価値のワーク)
すぐに「どんな親でありたいか」を思い浮かべるのが難しいときは、次の問いを自分に投げかけてみてください。
- 「子どもが大人になったとき、私との時間をどんなふうに思い出してほしい?」
- 「今日1日を終えるとき、“これだけはできてよかった”と思える関わりは何だろう?」
👉 こうした問いを通して浮かんできた言葉(例:安心・ユーモア・あたたかさ)を、小さな行動につなげてみましょう。
4. 小さな行動をひとつ選ぶ(コミットメント)
イライラが残っていても、価値に沿った小さな行動をとってみます。
👉 例:
・声を荒げそうなときに、トーンを半分に落とす
・「大丈夫だよ」と一言だけ伝える
・寝る前にハグをする
完璧でなくてOK。「イライラしながらでも、大切な方向に進めた」と思えれば、それがACTの実践です。
まとめ
この記事では、子育てでイライラが止まらない、と感じている人に向けて心理学の視点からその仕組みと、イライラと付き合うコツについてお伝えしました。
イライラは「なくすべきもの」ではなく、「上手に付き合っていくもの」です。
そのために、大切なことは、
・人に頼ることもしながら休息をとること、頼れないときは頼ることをイメージするだけでもOK
・イライラを無理になくそうとせず、「今イライラしている」と受け入れ、できそうな行動を1つでもやってみること
もし、イライラが止まらない…と思ったとき、この2つを思い出してみてくださいね。
ACTについて詳しい説明はこちらからご覧いただけます↓
https://leself.jp/blog/about-acceptance-and-commitment-therapy/
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イライラを受け止めて自分のしたい子育てをしていく?そんなの綺麗事!と思うのも無理はありません。しかし、自分1人では難しいことも一緒に整理したりやり方を練習してみることで実践できることも。ぜひ一緒にACTプログラム、進めてみませんか。
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参考文献
1)Grillon C, Quispe-Escudero D, Mathur A, Ernst M. Mental fatigue impairs emotion regulation. Emotion. 2015 Jun;15(3):383-9. doi: 10.1037/emo0000058. Epub 2015 Feb 23. PMID: 25706833; PMCID: PMC4437828.
2)大迫 健,岩永 裕人,徳永 瑛子, 菊池 泰樹,田中 悟郎,岩永竜一郎(2017). 幼児をもつ母親の育児ストレスと関連要因.日本発達系作業療法学会誌第5巻第1号
3)Lazarus, R. S., & Folkman, S. (1984). Stress, appraisal, and coping. Springer.
4)Rockliff, H., Gilbert, P., McEwan, K., Lightman, S., & Glover, D. (2008). A pilot exploration of heart rate variability and salivary cortisol responses to compassion-focused imagery. Clinical Neuropsychiatry: Journal of Treatment Evaluation, 5(3), 132–139.
