【2024最新】ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは?
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Le:selfは、Acceptance and Commitment Therapy (ACT) を受けられることを示す、Association for Contextual Behavioral Science (ACBS)に登録された正式な機関です。
Le:selfではACTに基づいたカウンセリングはもちろん、ACTをまずは学んでみたいという方のためにACTプログラムという1対1で学べるサービスも展開しており、不安やストレスとうまく向き合いながら、自分が本当に大切にしたいことに基づいて行動する力を養うことができます。
そもそもAcceptance and Commitment Therapy(ACT)とは?
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、「人生の中で避けられない不快な感情や思考と、どのように付き合っていくか」を考えた、新しいアプローチの心理療法です。不安やストレスは誰にでもあるものですが、ACTではそれらを「減らすこと」ではなく、「上手に共存すること」に重きを置いています。不安や悩みに振り回されず、自分が大切にしたい価値に向かって行動することで、充実した日々を実現していくことを目指すのです。
ACTの発展の背景:第3世代の認知行動療法
上の図の通り、CBT(認知行動療法)は、これまでに3つの世代を経て発展してきました。
第一世代:行動療法(Behavior Therapy)
行動療法は、心の状態を「観察できる行動」によって評価し、行動を変えることで心の改善を目指しました。
第二世代:認知療法(Cognitive Therapy)
「人間は考える生き物」という視点から、行動の改善には「思考パターンの修正」が不可欠だとする認知療法が登場しました。不安やストレスを引き起こす考え方を変えることで、感情を安定させようというアプローチです。
第三世代:ACT(Acceptance and Commitment Therapy)
しかし、現実の生活では一つの不安を解消しても、別の悩みやストレスが生まれるのが常です。こうした背景から、ACTが生まれました。ACTは、不安を無くすのではなく、「不安と共に自分が大切にする価値に向かって行動する」ことを目指しています。
従来型CBTとACTの違い
従来のCBTといわれる、行動療法(behavioral Therapy)・認知療法(Cognitive Therapy)。
これらは、分析に基づき、問題となっている行動を減らすこと、抑うつ・不安・ストレスなどを減らすこと、というように、とにかく悪いものを減らすことが目的となります。
つまり、不安を引き起こす思考や行動を分析し、それを少しずつ調整・変化させることに重点が置かれています。
そこへ、第3世代のACTがシュッと加わったわけですが、従来型のCBTと何が違うのか。
、ACTは不快な感情や思考を「変える」のではなく、「そのまま」にしておくという全く異なるアプローチを取ります。
つまり、不快な思考や感情があってもそれを受け入れ、それにとらわれることなく自分の価値に基づいて行動し続けることが重要であるとします。このように、ACTの目的は「感情を減らすこと」ではなく、「感情にとらわれずに行動する柔軟性を身につけること」なのです。
日常生活では、たとえ一つの不安を解消しても、また新たな問題や悩みが次々と現れるものです。仕事の悩みが一段落しても、今度は家庭でのストレスが生まれるといった具合です。そこで登場したのがACTです。
ACTでは、こうした「不快な感情や思考をコントロールせずに受け入れ、それにとらわれず自分の価値に沿った行動を続けること」を重視しています。これがACTでいう「心理的柔軟性」です。
ACTは、誰もが避けられない思考や感情にとらわれずに、自分の価値に沿った人生を目指すための方法を提供しているのです。
従来型CBTとACTの違い – イメージ動画
言葉で説明されても、頭に入らないという人のために・・・
イメージ動画でどうぞ。
CBTによって武器を身につけパワーアップした人がその武器を持って、不安を小さくする!
不安が小さくなるんだから、楽になる!そんなかんじです。
ああ、不安さんが現れたなぁ。不安さんこんにちは。この不安さんを手に一緒に持ったまま、自分がやりたいことに進んでいこう。これがACTでの不安の扱い方。動画ではACT vs Anxietyとなっていますが、”vs”を使うことがしっくりこないような、そんな感じの扱い方です。
ACTの6つのコアプロセス
ACTは、「心理的柔軟性」を高めるために6つのコアプロセスを用い、それによって不安や悩みを抱えながらも価値ある行動を続けていく力を養います。
- 脱フュージョン(思考と距離を置く)
不安やネガティブな思考に囚われず、それを一歩引いて観察します。たとえば「自分は価値がない」と思ったとき、それを「自分は価値がないと感じている」と捉え直すことで、思考と現実を切り離し、思考に振り回されるのを防ぎます。 - アクセプタンス(受け入れる)
苦しい感情や思考を変えようとせず、あるがままに受け入れます。不快な感情があっても、それに心を開いて「そのまま感じる」ことで、感情に対して余裕が生まれ、行動の幅が広がります。 - 今この瞬間に注意を向ける(マインドフルネス)
過去や未来へのとらわれから離れ、「今ここ」に意識を向けて、自分の体験にしっかりと関わります。呼吸や感覚に集中することで、不安や悩みから一歩距離を置き、今の自分を感じることができます。 - 文脈としての自己(俯瞰する視点)
自分を「思考や感情を観察する視点」として捉える練習です。たとえば「私は〇〇な人間だ」という固定したイメージに囚われず、「私は今〇〇と感じている」と、感情や思考から一歩引いて観察します。これにより、柔軟に物事に対応できるようになります。 - 価値の明確化(自分にとって大切なことを知る)
自分が人生の中で本当に大切にしたい「価値」を明確にします。たとえば「親切でありたい」「自分の夢を実現したい」など、行動やあり方に関する指針です。価値はゴールとは異なり、人生の方向性を指し示すものです。 - コミットメント(価値に基づく行動を取る)
明確にした価値に基づき、実際に行動を起こし続けることです。価値を知っただけでなく、具体的な行動計画を立て、それを実践していきます。価値に基づく行動を取ることで、充実感や満足感を得られるようになります。
ACTに適した人ってどんな人?
日々の不安に振り回されず、人生の価値を見つけたい人
ACTは、「価値の明確化」を通じて、毎日をより豊かにしたいと考える方にも適しています。不安やストレスが日常の妨げとなっている場合、それらの感情を受け入れながらも自分にとって本当に重要なことに焦点を当てることで、充実感が高まります。人生の充実度を測る複数の調査において、ACTを取り入れた人々は自分にとっての「価値ある人生」に近づきやすいことが示されています(Hayes, et al.)1)。
慢性的な不安やストレス
ACTは、一般的な不安障害だけでなく、反復して感じる不安や慢性的なストレスにも効果があるとされています。例えば、Hayesらの研究では、ACTを通じて「心理的柔軟性」を高めることで、従来の治療ではなかなか改善しにくい慢性的な不安症状が軽減することが示されています 1)。
慢性痛や身体の不調に伴う苦痛
慢性的な痛みなど、完全に解消できない身体の問題がある場合、ACTは痛みを完全に取り除くことよりも、その痛みと共に価値ある行動を選べるように支援します。これにより、痛みによる生活の制限が減り、活動の幅が広がることが多いです。たとえば、Vowlesらの研究 2)によると、ACTは慢性痛においても有効で、痛みの受容を高め、日常生活での充実感や行動の範囲を増やす効果があるとされています。
自己否定的な思考や完璧主義に悩む人
ACTは、自己否定的な思考に悩んでいる方にも適しています。認知的フュージョン(思考と現実を混同してしまう状態)が強いと、自分に対しての否定的な思考に支配されがちです。ACTはこれを「脱フュージョン」のスキルで緩和することで、自分を価値ある存在と見なせるようサポートします。研究によると、ACTは完璧主義者にも有効で、過剰な自己評価基準を緩め、自己への厳しさを和らげることが示されています 3)。
物事を回避しがちな人や強い依存傾向がある人
ACTは、困難な感情を避けるために回避行動や依存行動を取りやすい人にも向いています。たとえば、体験の回避行動が依存症の一因となることもありますが、ACTは感情を抑え込むのではなく受け入れることで、健康的な行動への転換を促します。Levin 4)らの研究によれば、ACTは依存症治療の効果を高め、依存行動を減らす手段としても有効です。
Le:selfのACTプログラム(Le:self Method )
Le:selfでは、ACTをプログラムとしてご提供しています。カウンセリングというと「悩みがないと受けられない」「何を話せばいいかわからない」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、このプログラムは「とりあえず心のことを学んでおきたい」という方にも安心してご利用いただける学びのサービスです。カウンセリングに抵抗がある方でも、まずは心のケアやスキルを学んでおきたいと感じる方に最適な内容ではないかと思っております。
このプログラムでは、夫婦や親子、兄弟姉妹、上司・部下・同僚、友人、恋人など、さまざまな関係や役割の中で「自分らしくいるためのスキル」を学びます。日常で起こる人間関係の中で、ACTのスキルを使って自分の価値に沿って行動するための実践的なサポートを行います。現実世界でACTを活かしながら、柔軟で充実した人生を築くための力を育むプログラムです。
ぜひ、以下のプログラム詳細をご覧いただき、無料体験やLINE登録特典もご活用ください。
ACTを通じて、あなたの「本当に大切な価値」に基づく人生を共にサポートさせていただきます。
おまけ 2024最新 ACTの今後
1. ACTの最新研究と科学的進展
ACTは、最近の神経科学の研究において、脳の機能や柔軟性にどのように影響を与えるかが明らかになりつつあります。特に、感情をコントロールする「前頭前野」や「扁桃体」と呼ばれる脳の部分に作用することがわかっています5) 。こうした知見は、ACTが心理的な柔軟性を高めるプロセスにおいてどのように脳の働きを改善するかを示しており、特に不安症やストレスの治療に役立つ可能性が高まっています。
2. デジタルツールによるACTのサポート
2024年の最新の動向として、ACTの学習を日常生活に取り入れやすくするためのアプリやAIサポートが増えています。これにより、スマホで日々の気持ちやストレスを記録し、AIがアドバイスを提供するなど、ACTのテクニックを身近に学ぶことができるようになりました。これにより、自己反省やマインドフルネスの練習をいつでもどこでも行える環境が整っています。大学生を対象にした研究では、ACTアプリを使って不安症状の緩和に成功し、デジタルツールの効果も証明されてきています 6)。
さらに、VR(仮想現実)を利用したACTの体験も進んでおり、社交不安などの治療に役立てられています 7)。VRで実際のシーンを再現しながら、不快な感情と向き合うACTのスキルを体験的に学ぶことができるため、従来のセラピーよりも現実的な環境での練習が可能であり、オンラインなどのツールを使用した介入も十分期待できるようになってきています。
3. 職場や学校でのメンタルヘルスサポートへのACTの導入
ACTは職場や教育機関でのメンタルヘルス支援においても重要な役割を果たしています。職場では、従業員が不安やストレスにとらわれずに価値ある仕事を進めるスキルとして活用されています。ACTを職場でのストレス管理に応用することで、従業員の心理的柔軟性が向上し、業務に対するモチベーションも高まることが示されています8)。また学校では学生がストレスに対処しながら学業や目標に向かうためのメンタルヘルスプログラムとしてACTが導入されています。これにより、ビジネスや教育現場でのACTの活用もさらに進んでいます。
4. リモートワークとデジタルライフへのACTの応用
リモートワークが増えたことで、孤独感や仕事とプライベートの境界が曖昧になる問題が多く発生していますが、ACTは、働く際のストレスや孤独感と向き合いながら、自分にとって大切な価値に基づいて行動を続けるスキルを提供することができると言われています 9)。そのためリモートワークでも心のバランスを保ち、価値ある働き方を実現するために役立つアプローチとなる可能性があります。
こうした最新の研究により、ACTは、従来の心理療法を超えて、生活全体にわたって心を豊かにし、価値ある人生を送るためのツールとしてさらに発展し続けています。Le:selfはこれらの研究なども追いながら、1人1人に適切なACT(もちろんACTでないことも含め)などのアプローチを行いながら、皆さんが仕事や日常生活を充実させながらより良く生きていくことをサポートできればと考えています。
<参考文献>
1)Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G. (1999). Acceptance and Commitment Therapy: An Experiential Approach to Behavior Change. The Guilford Press.
2) Vowles, K. E., & Sorrell, J. T. (2007). Life with chronic pain: An acceptance-based approach. In Hayes, S. C., Follette, V. M., & Linehan, M. M. (Eds.), Mindfulness and Acceptance: Expanding the Cognitive-Behavioral Tradition (pp. 267-287). The Guilford Press.
3) Twohig, M. P., & Levin, M. E. (2017). Acceptance and Commitment Therapy as a Treatment for Anxiety and Depression: A Review. Psychiatric Clinics of North America, 40(4), 751–770.
4) Levin, M. E., Hayes, S. C., & Pistorello, J. (2017). Web-based self-help for preventing mental health problems in universities: Comparing Acceptance and Commitment Training to mental health education. Journal of Clinical Psychology, 73(12), 1785–1808.
5) Hoge, E. A., et al. (2021). “The neural mechanisms of acceptance and commitment therapy in anxiety.” Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 125, 127-142.
6) Levin, M. E., et al. (2020). “A randomized controlled trial of a smartphone app for ACT-based self-help in university students with anxiety.” Behavior Research and Therapy, 135, 103757.
7) Bouchard, S., et al. (2017). “Acceptance and commitment therapy and virtual reality for social anxiety disorder: A pilot study.” Journal of Clinical Psychology, 73(6), 617-626.
8) Bond, F. W., & Bunce, D. (2000). “Mediators of change in emotion-focused and problem-focused worksite stress management interventions.” Journal of Occupational Health Psychology, 5(1), 156-163.
9) Kashdan, T. B., & McKnight, P. E. (2013). “Commitment to a purpose in life: An antidote to the suffering by pursuing meaningful work.” Journal of Positive Psychology, 8(2), 130-143.