【公認心理師解説】40代女性がイライラとうまく付き合うためのACT(アクト)

「40代になってなんだかイライラしやすいかも・・・もうそろそろ更年期なのかな」
「子どもが大きくなってきて小さいときと比べると子育てに手がかからなくなり負担は減ってるはずなのになんでこんなイライラするんだろう」
「毎日しなきゃいけないことがたくさんあるのにイライラしてばかりで家族に申し訳ない」
こんなことを日々考え、ご自身を責めながら過ごしていらっしゃる方がいるかもしれません。 この記事ではイライラに悩んでしまう理由を心理学的な視点から解説し、その解決法も合わせてをご提案していきます!
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40代女性がイライラする原因
イライラしたり、怒ってしまうのは誰にでも日常的におこる自然な感情です。 色々な考え方がありますが、怒りは脅威を知らせる役割があると考えられています。自分の何かが脅かされたり、冒されたりするという脅威を自分は感じているのだということを、自分で自分に知らせるサインなのです1)。
こんな不快な感情である怒りはコントロールしたい、なくしたいと思ってしまいますが、残念ながらなくすことは困難だと言われています。また、大切な感情や大切なことを知らせてくれているサインなので、なくしてしまうと、今度は自分を守るということができなくなってしまいます。
ですので、敵視してなくそうとするのではなく、上手に付き合っていくことが重要です。 しかしそもそもなぜ40代の女性がこんなにも様々な場面でイライラしてしまうのでしょうか?それについてまずは知っていきましょう。
人間の発達段階
みなさんは、ハヴィガーストの6つの発達課題というのはご存知ですか? 保育士などの国家資格の試験にも登場する有名な人間の発達課題です。 R.J.ハヴィガースト というアメリカの教育学者が提唱しました。彼は、人間が健全で幸福な発達をとげるために各発達段階で達成しておかなければならない課題があると考えています。 6つの発達段階とは乳幼児期、児童期、青年期、壮年期(成人初期)、中年期(成人中期)、老年期を指します。またそれぞれの段階に応じた発達課題を挙げています。

参考:黒田実郎.1988.「発達課題」平山宗宏ほか編.『現代子ども大百科』中央法規出版.p.208.より一部抜粋,作成。Havighurst, Robert J. 1953. Human Development and Education, 1st ed. New York: Longmans, Green(=1995.荘司雅子監訳.『人間の発達課題と教育』玉川大学出版部.)
40代は中年期の段階に該当します。
- 10代の子どもの教育
- 成人としての社会的責任の遂行
- 一定の生活水準の確保
- 成人としての余暇活動の充実
- 配偶者との人格的結びつきの確立
- 中年期の生理的変化への対応
- 老年の老親との関係の調節
こちらをみてわかるように、「自分自身」「仕事」「今の家族や子ども」「自分の身体」「親や介護」という複数の領域で課題が上がっています。他の段階ではこれほど多岐のわたるものはあまり見受けられません。
40代という時期は自分自身のことだけでなく、家族や社会という多くの領域でしなければならないことがあり、それだけストレスが多くイライラしやすくなってしまう時期であると予想ができます。
日本ではまだまだ、女性が子育てだけでなく介護もしなければならないと考える人が多いのが現状です。さらに政府は女性が仕事を継続できるように税制面などで環境を整えつつあります。つまり、子育て、介護、仕事・・・これだけのことを一度にこなす環境に身を置いている女性が非常に多いことが言えます。
母として、子どもとして、嫁として、一人の社会人として、多くの役割りを果たさなければならず、めまぐるしく変わる環境の中では自分自身はどうしたいのか、これから自分がどう生きていきたいのかに迷いが生じやすくなり、もやもやしたり、イライラしたりすることもあるでしょう。
つまり、ストレスが多い上に、自分らしく生きるのがとても難しいため、イライラするのは当たり前で、あなたのせいではないのです。しかし、上手に付き合う方法を知らなければ、怒りと戦う毎日に疲れてしまったり、あなたらしく生きていくことからどんどん遠ざかってしまったりしますね。ではどうしたらよいのでしょうか? そこでAcceptance and Commitment Training(ACT)という心理学の新しい考え方をご紹介します。
40代女性のイライラとの上手な付き合い方
ACT(Acceptance and Commitment Training(Therapy):アクセプタンス & コミットメントトレーニング・セラピー)はアクトと読みます。考えや感情と新しい付き合い方を提案するトレーニングの1つです。
ACTでは自然と湧き上がってしまうこころの苦痛や問題に対して、それを否定するのではなく受け入れることを基本とします。そして、自分自身が大切にしたい考えを大切にしながら、いきいきとした生活を送ることを目的としています。
つまりイライラを無くしたり、小さくすることではなく、むしろともに一緒に過ごしていくことを目指します。そして、「価値」といわれる自分が選択した大切にしたい人や考えをもとに行動し続けることを目指していくのです。
「価値」はコンパス(方位磁石)に例えられ、自分の向かっていきたい方向、すなわち自分軸のようなものを指します。
これから夕飯をみんなで食べようと、遊んでいる子どもたちを何度呼んでも全然こちらにはきてくれないとき、だんだんとイライラしてしまって「いい加減にして!早くこっちにきなさい!」と怒ってしまうことがあるかもしれません。でも後々、そんなに怒ることではなかったと後悔してしまったりしますよね。
この怒りはあなたが何を大切にしていることを表しているのでしょうか。 「夕飯を早く食べて、ゆっくりした時間を作りたい」
「一生懸命作った夕飯を美味しく食べてほしい」 など自分の本来の想いが怒りの底に隠れているはずです。そこから見える「価値」とはどんなものでしょうか。
「家族との時間を大切にしたい」
「家族と美味しいものを食べる時間を大切にしたい」
そのような「価値」が潜んでいるのかもしれません。 それでは、この「価値」に沿った行動をとるとするならばどのような行動が取れるでしょうか。
「美味しいうちに食べて、楽しく過ごしたいから、早めにこっちにきてね」と伝える。
そんな方法もあるかもしれません。
このようにACTでは、イライラしていることには気づきながら、イライラしたままでも良いので、「価値」に沿うような行動を思い切って選択し、行動していくようなトレーニングをしていくのです。
まとめ
この記事では、40代女性がイライラしてしまう理由と対処方法をご提案しました。
〇イライラや怒りは大切なものを教えてくれたり、脅かすものが迫っていることを教えてくれる大切な感情であり、敵ではない。
〇40代女性のイライラは、仕事、家庭、介護、自分の身体のことなどストレスがあふれており、そもそも自分らしく生きるのが難しい環境にいるからこそおこる自然な感情である。
〇ACTの価値の考え方を用いて、自分らしく生きていくコンパスを見つけることで、イライラと上手に付き合っていくことが可能である。
しかし、この記事を読んで、感じたことがみなさんあるはずです。 そもそもイライラしていたら、爆発してしまって、こんなふうに「価値」に沿った選択など、冷静にできるのだろうかと。
大丈夫です。トレーニングをしていくことで、脳自体が変化し、上のような状態が実現していくことが、きちんと脳科学の研究などでも示されています。
しかし、それを1人で実践していくことはなかなか難しいでしょう。
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<参考・引用文献>
Havighurst, Robert J. 1953. Human Development and Education, 1st ed. New York: Longmans, Green(=1995.荘司雅子監訳『人間の発達課題と教育』 玉川大学出版部.)
黒田実郎.1988.「発達課題」平山宗宏ほか編『現代子ども大百科』中央 法規出版,208.
水島広子. 2014. 大人のための「困った感情」のトリセツ 大和出版.
この記事の執筆者

公認心理師。Acceptance and commitment Therapy(認知行動療法)を専門とし、より良い生き方を軸におくカウンセリング(子育て・家族・働く人)を得意とする。SNSやネットで検索をすれば的確な答えがでてくる時代。でも自分は何を大切にして生きていきたいのかは誰も教えてくれません。科学的な根拠にもとづいた方法で、あなたが大切にしたいこと(価値)を見つけ、歩んでいくことを一緒にやっていきませんか?