【公認心理師解説】女性の頭痛のためのACT(アクト)
「頭痛って誰でも起こるし、どうしようもない」
「薬を飲んでも効果はどうせ一時的であんまり意味ない気がするけど、飲まないと仕事にならないから飲むしかない。」と考えておられる方はいませんか。
薬などで対処することも重要な一方で、痛みとの付き合い方を学ぶことで楽になるケースもあります。本記事では、女性の頭痛とストレスの関連性、そしてその対処の一例をご提案させていただきます。
Table of Contents
頭痛の種類と女性の頭痛
頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分類されています5)。
一次性頭痛は、他の病気が由来ではないが頭痛を繰り返したり続いたりすることが困るというものです。
二次性頭痛は、くも膜下出血や脳腫瘍などの脳や頭の器質的疾患があることで出てくるものです。
今回の記事は一次性頭痛についてお話ししています。よく聞かれる片頭痛や緊張型頭痛が一般的で、日本人の4人に1人が困っているとされています。受診をしていない人を含めると潜在的にはもっと存在するとも言われています。片頭痛に関しては男性よりも女性が3-4倍多いといわれていますが、この原因ははっきりとまだわかっていませんが、月経や女性ホルモンによる影響もあるのではないかといわれています。
頭痛が起きやすい心のあり方 -女性の頭痛と心の関連-
片頭痛発作を引き起こす誘因としては、: ストレス(72%)、月経(68%)、強い臭い(55%)、不規則な睡眠(52%)、天候の変化(46%)、欠食(45%)、身体運動(45%)が挙げられています2)。
一次性頭痛は心身症(ストレスの影響が体に現れる病気の総称)として考えられています。
ある研究3)では、過剰適応と一次性頭痛(特に緊張型頭痛)が関連していることを示しています。
過剰適応は人との関わり方のひとつです。周囲の人に合わせようとしすぎてしまって、自分の思いや希望を無理に抑えすぎてしまうという特徴があります。この研究の結果では、頭痛のある人は「他人からどう思われるかを考えすぎてしまう(他者評価懸念)」「助けてというのをしり込みしてしまう(援助要請への躊躇)」という得点が高いことが分かっているのです。 つまり、自分の気持ちを抑え、他人に合わせやすい人(言い換えれば優しい人とも言えるかもしれません)と、頭痛は関係している可能性があるということです。
また別の研究1)では、頭痛(片頭痛)がおこりやすい人は能動的なコーピングを取りやすい可能性が示されています。能動的なコーピングとは「問題を解決しようと努力した」など、自分でその問題をなんとかしようとすることです。
つまり、積極的に問題を解決しようとする人と頭痛は関連しているということが言えますね。
先に挙げたように頭痛が起きる要因はストレスだけではないので、過剰適応を止めたり、能動的なコーピングをとらなくなれば、解決するというわけではありませんが、「人に合わせすぎてしまう」「問題解決しようとする」という行動の取り方を少し見直すことで、頭痛が減る可能性があるということになります。
たまには、自分のことだけを考えた自分やさしい行動をとってみたり、解決が難しいものは問題解決することをあきらめて、美味しいものを食べて発散したり、といつもと異なる方法、行動もとってみることが、頭痛にとっては良いと言えるかもしれませんね。
女性の頭痛(痛み)とACT
私たちはどうしても医療的な文脈で痛みに対処しようとするのが一般的です。
医療的な文脈とは、「痛みがあるのは原因があるからで、その原因がなくなれば痛みを感じなくても済む」という考え方です。しかし心身症と考えられている頭痛の場合は、原因は不明で、誘因が多様なため、根本的に原因やきっかけを無くすことは不可能です。
すべてのストレスを取り除くことができればいいですが、女性がおかれている環境を考えるとストレスをゼロにすることは残念ながら難しいと言えるでしょう。
ではどうしたらいいでしょうか?
痛みという変えられないものと上手に付き合うための心理学としてAcceptance and Commitment Therapy=ACT(アクト)というものがあります。ACTは自然と湧き上がってしまう自分の思考や感情にとらわれることなく、自分自身が大切にしたい考えを大切にしながら、いきいきとした生活を送ることを目的としています。
ACTのセッションなどでよく使う、ACT Matrixという十字の図を用いて、医療的文脈ではどんなことが起きているのかを解説します。
図の左側では、医療的文脈で考えたときの私たちの考えとそのときの様子が書かれています。
一方右側は、私自身でいられる時間で大切にしていること、そのときの様子が書かれています。
左側にいる以上は右側の私自身でいられる行動をとることはなかなかできません。つまり、左側にいすぎてしまうと、痛みがより増してしまう上に、自分自身が心地よいと思える行動を取ることができないために、より、辛くなってしまうということが言えます。
したがって、ACTでは痛みはありながらも、それ自体は大きく変えられるものではないので、それらを上手に置いておきながら、自分が大切にしたいことに沿った行動を少しでも取ることができるようにしていきます。図で言うと、右上の行動を取る時間が少しでも増えるようにしていくということになるのです。
たとえば、頭のずきずきした痛みがあると不安になり、図の左下のように「痛みはなくすべきだ」と言った考えや不安が出てきたりしますね。それらの考えや不安とうまく一緒にいるスペースを心の中に作っていき、距離をとりながら、自身の大切なことに沿った行動を取れるようにしていくのです。
言葉だけで説明をするとなんだか難しそう・・と思われたかもしれませんね。これらの方法は、英語を覚えるだけでなく、会話の練習をしなければ話ができないのと同じで、実践で練習していくことが何より大切です!
一度体験してみたいという方は最後にご紹介するLe:selfのACTプログラムなどを受けてみてくださいね!
まとめ
本記事では女性の頭痛とストレスとの関連性、そしてその対処方法を提案しました。
〇頭痛には一次性頭痛と二次性頭痛がある。脳や頭の病気を由来としないのに頭痛が続く一次性頭痛には片頭痛や緊張型頭痛がある。
〇頭痛がある人は、頭痛の種類にもよるが、「他人にどう思われるかが気になる」「他人にSOSを出すのが苦手」「ストレスを感じたときに自分でなんとかしようとしすぎる」傾向があることが示唆されている。
〇原因をなくせば痛みはなくなるという考えがうまくいかないならば、変えられないものとはうまく付き合うという考え方で、頭痛と付き合っていくのも一つの方法である。
頭痛といっても、症状の内容・程度は人によってさまざまです。
一次性頭痛だと思っていても、脳や頭の病気を由来とする二次性頭痛の可能性もあるので、最初から付き合っていくことだけが正しいわけではなく、医療機関を受診することも重要です。しかし、原因はないのに頭痛が続く一次性頭痛の可能性が高く、自分らしく生活が送れていないのであれば、これをきっかけにやり方を変えてみるといいかもしれませんね。
あなたにあった対処方法がみつかることを願っています。
Le:selfのACTプログラム
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<参考・引用文献>
1.福田俊介・池田浩之(2019)緊張型頭痛と過剰適応の関係 : 対人ストレスへの対処を観点として, 発達心理臨床研究, 25, 67-76.
2.市民公開講座『女性のための頭痛講座』〜正しく知って賢く対処!〜file:///C:/Users/akimi/Downloads/2014%E5%B8%82%E6%B0%91%E5%85%AC%E9%96%8B%E8%AC%9B%E5%BA%A7-1.pdf
3.端詰勝敬(2021)一般大学生における片頭痛と精神疾患、ストレスコーピング様式および行動面の特性について, 心身医学, 41(8), 619-626.
4.端詰勝敬・小田原幸・小山明子(2018)女性と頭痛, 女性心身医学, 18(3), 372-375.
5.一般社団法人日本頭痛学会 https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_01.html#01a
この記事の執筆者
公認心理師。Acceptance and commitment Therapy(認知行動療法)を専門とし、より良い生き方を軸におくカウンセリング(子育て・家族・働く人)を得意とする。SNSやネットで検索をすれば的確な答えがでてくる時代。でも自分は何を大切にして生きていきたいのかは誰も教えてくれません。科学的な根拠にもとづいた方法で、あなたが大切にしたいこと(価値)を見つけ、歩んでいくことを一緒にやっていきませんか?