【臨床心理士解説】働くことがストレス!うまく対処するためのアクセプタンス & コミットメントトレーニング(ACT)

日々働く上で「働くことがストレスで体調が悪い」と感じたり、「仕事をやらなきゃいけないのに体が動かない」と感じることはありませんか。
働くことがストレスだと感じるあなた。働く上でのストレスにはどのようなものがあるかこころと身体の中でどんなことが起きているのかをまずは知りましょう。
そして、働くことがストレスでも、なかなか避けることができない仕事によるイライラ・不安といった感情とうまく付き合う方法を、ACTやマインドフルネスの視点でお伝えしていきます。

働くことがストレス!?ストレスにはどんなものがある?

厚生労働省によると、働くことがストレスだと感じている人は全体の約6割いると考えられています。では、このような仕事のストレスは、私たちにどのような影響を及ぼすのでしょうか。

NIOSHの職業性モデル

働くことがストレス、と感じているとき、それらはどのようの形で私たちの健康に影響を与えるのか、これを表したものが米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が作成した「職業性ストレスモデル」です 1)。

このモデルについて、少しだけ説明をしましょう。「仕事のストレス要因」(仕事量や質、人間関係、裁量度、温度や騒音等)は、「仕事のストレスのもととなるもの」です。ストレス要因が継続的にかかると、私たちは「ストレス反応」(心理面、身体面、行動面への変化)がおきます。


<ストレス反応>
心理的側面:抑うつ感、怒りっぽくなる、不安感、緊張感
身体的側面:高血圧、首・肩こり、動機・息切れ、めまい、吐き気、眠れない
行動的側面:遅刻や早退が増える、ミスが増える、忘れっぽくなる、飲酒が増えるなど


たとえば、人間関係のストレスが大きいと、イライラしたり、腹痛が起きる・・といったイメージです。このストレス反応を放置していると、やがて、パフォーマンスの低下や、ストレスに関連した病気(ストレス関連疾患)などの問題が生じる、という一連の流れを示します。
これらのストレスをうまく緩和するにはどうしたら良いのでしょうか。

「仕事以外の要因」(子育て、介護などのプライベートの問題)や「個人要因」(年齢、性別、性格など)、上司・同僚・家族からのサポートによりストレス要因を緩和する「緩衝要因」があると良いと言われています。 また、「個人要因」としては、ストレス要因に対して、たくさんの考え方(認知的評価)をもつことができたり、様々な種類の対処法(コーピング)をたくさんもっていたりすることが重要だともされています。 このように、私たちのこころと身体を守るために、仕事のストレス要因で変えたり調整できるものはしていく、そして緩衝要因、個人要因などをうまく機能させること、これらを経てストレスにうまく対応し、ストレス反応を重症化させないことが非常に重要だといえるでしょう。

ただ、現実的に、仕事のストレス要因には様々なものがあり、厳しい期限や難しい課題、切れない人間関係など、さまざまなストレス要因をなくすことや、コントロールすることは難しいこともあるでしょう。また、いつでも周囲からサポートが受けられるわけでもないし…と思う方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、だからといって働くことがストレスと感じているまま、放置してしまい、ストレスによって自分が心身共に不健康になってしまっては、自分らしい働き方も出来なくなってしまいますね。ですので、ここからは、さらに別の方法として、避けられない働く上でのストレスを小さくするのではなくうまく付き合っていく、心理学でも比較的新しい方法をみなさんにご紹介します。

働く上でのストレスとの新しい付き合い方(ACT)を知ろう

避けられないものと上手に付き合うための心理学としてAcceptance and Commitment Therapy(アクセプタンス & コミットメントセラピー)=ACT(アクト)というものがあります。ACTは自然と湧き上がってしまうこころの苦痛や問題に対して、それを否定するのではなく受け入れることを基本とします。そして、自分自身が大切にしたい考えを大切にしながら、いきいきとした生活を送ることを目的としています。

この記事を読まれている方は、働くことがストレスと感じ、それに対してどうしたらいいかわからなかったり、モヤモヤ・イライラしたり、不安になったり、この先どうしようという嫌な考えで頭の中がいっぱいになってしまうこともある方が多いでしょう。 働く上で、このACTの理念はストレスと上手く付き合っていくために効果的です。

仕事ではさまざまなストレス要因を持つことは避けられません。そして、それに対して、嫌な考えが浮かんだり、嫌な気持ちになってしまったりすることも避けられません。ACTは、そのようなストレス反応を呼び起こす可能性のある嫌な考えや気持ちを否定するのではなく、「自分は働くことがストレスだ、という嫌な考えがよく浮かぶ」、とか「自分は仕事のときに辛いと感じている」という事実をしっかり捉え、それらをなんとかしなければいけないと、嫌な考えや気持ちを小さくしたりなくすことに必死にエネルギーを注ぐのではなく、自分自身の価値観に基づいた行動にエネルギーを向けていくことを促します

例えば、自分の仕事のプロジェクトがうまく進行しないとき、「ポジティブに考えよう!」とか「まずは嫌な気持ちをうまく発散してから仕事しよう」というふうにするのではなく、「プロジェクトが進行しないことを自分は嫌だ、苦しいと感じているのだ」という事実をしっかりとまずは捉えてあげます。そして、認識した上で、それらの気持ちを否定したり無くしたりすることを先にしようとそこエネルギーを注ぐのではなく、その状況をどう改善したいのか、何が自分にとって大切なのかということを考えること、そしてその目指す方向に向かって行動を起こすにエネルギーを注いでいくのです。 以下に、ACTを活用した具体的な手法をいくつか紹介します。 ACTの目的は「心理的柔軟性(しんりてきじゅうなんせい)」を高めることです。「心理的柔軟性」とはその名のとおり、心がしなやかで柔軟な状態を指します。心理的柔軟性をアップするためのACTの基本的なアプローチは、以下の3つを用いることだと言われています。


  1. 価値・コミットメント:ACTでは、自分が何を大切に思うか、何を追求したいのかといった価値を明確に定義することが重要だと言われています。この価値を定義することで、嫌な考えが気持ちは一旦脇においておき、行動を進めることにエネルギーを注ぐ、その際の指針を設けることができます。
  2. マインドフルネス:マインドフルネスは、今現在の感情や状況を客観的に観察し、それを捉える、認知する力を養う方法です。働く上で、自分がまずどのように考え、感じているのかに気づくことはとても重要であり、マインドフルネスを継続することでそれが可能になると言われています。
  3. オープンになる:オープンになる、とは、嫌な考えや気持ちに対してもオープンになるということを指しています。これらを避けたり逃げたりするのではなく、うまく脇においておく方法になります。

先程のプロジェクトの場合を例にあげると…
まず、1の価値・コミットメントに従い、「自分が人生で、働くことに関してどんなことを大切にしていきたいのか」という価値について考えます。「仲間に思いやりを持って様々なことを進めたい」というのがあなたの価値だとしましょう。

次に、どのように今回のプロジェクトを進めると、「仲間に思いやりを持って様々なことを進めることになるのか」について具体的な行動を考えます。「プロジェクトメンバーの長所を挙げる」、「メンバーの長所に基づいたタスクを割り振る」などといった具体的な行動が挙がってくると良いでしょう。

しかし、いざ、それをやろうとすると、自分が思うように進まなかったりすることもあるかもしれません。そんなときには「長所を挙げてタスクを振り分けたけど、進みが遅い!」「やっぱり意味がなかったかもしれない、悲しい」といったような嫌な考えや気持ちが浮かんでくることもあるでしょう。それに2. マインドフルネスを用いながら、「プロジェクトが進まないな」「疲れてしまったな」と今の自分の考えていることや気持ちをありのままに捉え、嫌な考えを少し脇においておいたり、「そう思って自然だよな・・」と嫌な気持ちも優しく置いておく、すなわち3. オープンになる方法を使っていくのです。

このような手順を踏むことで、プロジェクトでのストレスを感じながらも、自分の価値に沿った行動をとることができ、嫌な考えや気持ちとうまく付き合うことで働くことがストレスだった状態から少しずつ脱することができるはずです。

まとめ

今回の記事では、働く上でのストレスと付き合うために、私たちができること、ACTがお役に立てることをご紹介しました。

〇働くことがストレスと感じている=NIOSHの職業性モデルに示されるように、様々な要因からストレス反応が起こることをさす
〇働く上でのストレスに対処するためには「ストレスとなる要因を軽減すること」「勧奨要因を厚くすること」「ストレス要因に対して、たくさんの考え方(認知的評価)をもつ、様々な種類の対処法(コーピング)をたくさんもつ」ことが重要
〇現実的に、働くストレスに対する要因を軽減することは難しく、「働く上でのストレスと上手く付き合っていく」という考え方も覚えておくと役に立つ
〇ACTは、変えられないストレスとうまく付き合い、気持ちを和らげたり、パフォーマンスの質を向上させ、いきいきと働くために効果があると考えられる

Le:selfのACTプログラム

今回ご紹介した、新しい心の扱い方、ACTの要素である、1. 価値・コミットメント, 2. マインドフルネス, 3. オープンになる という方法には、きちんとしたやり方があります。
特にマインドフルネスや、オープンになるといった考えや気持ちへの気づき方、扱い方はしっかりと専門家と学んでいく方が近道なことは間違いありません。
Le:selfには「私自身」でいられる時間を過ごすためのACTプログラムというサービスがございます。今回ご紹介したACTの3つのスキルを身につけていきながら、思考や感情、身体感覚と距離を置くスキルを一緒に学んでいく回がしっかりと含まれているプログラムです。
これらを働くことに限定しながら、学んでいくことも可能なので、ぜひ一度覗いてみてくださいね。
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<参考文献>
1) National Institute for Occupational Safety and Health(NIOSH:米国立労働安全衛生研究所)をもとに作成

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